無施肥無農薬田における雑草の発生と秋期,現存植生について

2004年度研究報告
報告者(芦田 馨)

本年度も,昨年度に引き続き5月から11月における各月の雑草発生本数の調査と2001年から2004年における4年間の総発生本数などの比較を行った。また,2001年11月と2004年11月の稲刈り後の水田に発生している雑草群落調査を行い,雑草について比較検討した。

本年度の調査地は,滋賀県の栗東(無施肥無農薬栽培歴,54年間),野洲(同,15年間)と福井県の今立(同,8年間)の3カ所について調査した。また,雑草群落調査は,栗東と野洲の2カ所について調査した。また、対照として隣接する慣行水田の調査も行った。

表−1 2001年から2004年の月平均気温と
月合計日照時間(奈良気象台・観候所データーより)
気温(℃)
2001200220032004平年
5月19.018.618.419.217.8
6月22.822.121.823.021.7
7月27.727.623.427.625.6
日照時間(時間)
2001200220032004平年
5月158.9152.1180.1154.9193.4
6月142.7175.1109.1178.7142.3
7月233.7191.899.9222.7173.1

1).無施肥無農薬水田土壌からの各月別発生本数(図−1)

図1 各水田における各月の雑草発生本数(本/屐

本年度の発生試験は,栗東,野洲と今立の3カ所について行った。土壌の採集 は,2004年4月26日に採集を行った。各地点の無施肥無農薬田と隣接する慣行田 の水口,水尻を含む水田の周辺4カ所と中央部の計5カ所の土壌を,直径4.5cm の金属製筒で約200 gを採集した。採集した土壌を約1週間ビニール温室内で風 乾した後,約1cmの穴のフルイを通して,石やワラくず,雑草の根などを取り除 いた。各区の土壌を100gづつ各々15.0×11.Ocm(165c屐砲離丱奪箸貌れ,水 道水を常に補充して堪水状態とした。5月から11月の各月毎に発生した雑草を種 類毎に引き抜き測定を行った。

雑草発生が多くなった月は,野洲と今立の慣行水田が5月,無施肥無農薬水田と栗東の慣行水田では,6月に最も多く発生した。栗東は各月とも無施肥無農薬水田の雑草発生が慣行水田に比べて少ない本数であった。また,2003年とほぼ同じ発生傾向が見られた。野洲においては,各月において無施肥無農薬水田と慣行水田の雑草発生にばらつきが見られ,2001年と同じような傾向を示した。今立は,6月無施肥無農薬水田で多くの発生が見られ,2003年と同じ傾向が見られた。無施肥無農薬田と慣行水田の間では,発生種類数の違いはほとんど見られなかった。これは,各々の水田が隣接しているために,種子の飛散や水による移動,履物に付着しての移動などによると考えられた。

2).過去4年間における年間雑草発生本数の比較(図−2)

各水田における年間の雑草発生本数(本/屐

年間雑草総発生本数を見ると,過去4年間で最も少ない発生本数の年は,各水田とも2003年であった。また,比較的多く発生した年は,2002年,次いで2004年であった。4年間に最も多く発生した水田の平均は,野洲の無施肥無農薬水田の15133本/屐さ佞忘任眈ない水田は,栗東の無施肥無農薬水田の9537本/ 屬婆鵝。苅亜鷯ない値であった。過去4年間とも栗東の無施肥無農薬水田での発生が最も少ない値であった。これは,雑草生育中の除草(特に幼植物や結実前)を手取りや田打車によって長期間行われ,埋土種子の減少などが原因と考えられた。

2001年から2004年度の5,6,7月の月平均気温と月合計の日照時間を表−1に示した。この表より,平年に比べて5,6,7月の合計で2001年は,+4.4℃,2002年,2004年は,+3.2°C,2003年は,−1.5℃となっていた。日照時間も2003年は,一119.7時間と少なく,2004年は,47.5時間と暑い年であった。この事により,雑草の発生のばらつきは,少なくとも気温や日照時間の減少による水温の低下などにも影響されたものと考えられた。

年間雑草発生本数の予測を行うために,各月の雑草発生本数と年間雑草発生本数の相関を求めると,2004年は,5月γ=0.79,6月・γ=0.81,7月γ=0.91と高い相関が認めら,予測が可能であると考えられた。過去の2001年5月(γ=0.63),2002年5月(γ=0.92)では,その年の年間雑草発生本数の約30%が発生し,相関も高い値であったために,5月の発生本数が年間雑草発生本数の予測できると考えられた。しかし,2003年は9 5月γ=0.14,6月γ=0.65,7月γ=0.64となり,5月の雑草発生本数の予測はできず,辛うじて6,7月の雑草発生本数によって,予測が可能な数値となった。

3).稲刈り取り後の雑草群落調査(表−2〜9)

栗東と野洲の稲刈り後の雑草群落調査を2001年11月27日と2004年11月18日の2 回行い現存植生の種類と優占種,遷移について調べた。調査方法は,50cm×50cmのワクを各水田の水口,水尻と中央を含む5カ所について調査した。

測定項目は,

  • ◎被度(図−3)は,ある植物の地上部における広がり,その種類が地上部の地表面にたいする投影面積,図の被度階級4から十までの6段階に当てはめて記録する。
  • 図−3 被度階級
  • ◎頻度は,その種類が水田内にどれくらい広まっているかを知る尺度で,頻度=(出現したワク数/測定した全ワク数)×100
  • ◎密度は,ワク内における個体数,地下部がつながっていても地上部がわかれていれば,複数として数える。
  • ◎草丈は,自然高草丈

以上を測定し,そのデーターを積算優先度法によって優占種と順位を求めた。

各表の一番上位の植物が優占種である。2004年は,タネツケバナが,2001年は,スズメノカタビラが優占種となっていた。無施肥無農薬水田での雑草種類数は,野洲で多く,また栗東では,乾性雑草が多く,野洲では,湿性雑草が多くなた。これは,土壌水分の違いによって埋土種子の発芽が影響されたと考えられた。2004年には,落穂から発芽した苗が多く見られた。2003年4月11日に調査した時に見られた雑草(スズメノテッポウ,ハハコグサなど)は,確認することができなかった。

表−2 栗東における無施肥無農薬田の現存植生 2004.11.18
植物名被度頻度(%)密度(本)草丈(cm)優先順位
タネツケバナ0.141006.81.11
スズメノカタビラ0.03800.83.02
イヌタデ0.24600.60.83
ノコンギク0.02400.82.34
アゼムシロ0.06603.40.75
ミゾソバ0.01200.40.56
イネ0.101003.22.5
表−3 栗東における慣行田の現存植生 2004.11.18
植物名被度頻度(%)密度(本)草丈(cm)優占順位
タネツケバナ0.201007.82.01
スズメノカタビラ0.16808.44.32
アゼムシロ0.12604.80.73
イヌタデ0.041001.41.44
オオニガナ0.02601.43.05
イネ0.2010010.44.8
表−4 栗東における無施肥無農薬栽培田の現存植生 2001.11.27
植物名被度頻度(%)密度(本)草丈(cm)優占順位
スズメノカタビラ0.10803.43.01
アメリカアゼナ0.01200.23.02
イチョウモ0.02601.01.03
オランダミミナグサ0.01200.42.04
ノミノフスマ0.02400.40.55
ウシハコベ0.01200.20.56
表−5 栗東における慣行田の現存植生 2001.11.27
植物名被度頻度(%)密度(本)草丈(cm)優占順位
スズメノカタビラ2.00100270.05.41
タネツケバナ1.011006.65.62
スズメノテッポウ0.02401.89.03
ヒメジョオン0.041003.61.04
ノミノフスマ0.02600.84.15
アメリカアゼナ0.22601.21.66
ウシハコベ0.03601.22.37
スイバ0.01200.23.08
セリ0.01200.22.09